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キッチンのほうから良い香りが漂ってきて、悠樹は急にお腹が空いてくるのを感じた。
考えてみると、昼に少し食べただけで、何も食べていなかった。
気になってキッチンのほうに行ってみると、いろんな料理が同時に完成するところだった。
本当に短時間でよくここまで手際よく作れるものだと、悠樹は改めて漣の料理の腕前に感心してしまう。
前菜からサラダ、メイン料理まできっちりとそろったそのメニューは、盛り付けも完璧で、店で出されてもおかしくないほどの出来栄えだった。
「これ、運んでいい?」
「ああ」
運ぶだけなら、さすがに漣も何も言わない。
悠樹は盛り付けの終わった皿をてきぱきとテーブルに運ぶ仕事をこなした。
「少しぐらいは酒も飲めるようになったのか?」
「あ、うん……この間、淳平と一緒に居酒屋に行ったんだけど……そこで一杯だけ飲んだよ」
「一杯だけか」
そう言って、漣はちょっとおかしそうに笑った。
「だって……淳平が一杯だけにしておけって言うから……」
「なるほど」
そう答えながらも漣はまだ笑っていた。
「べ、別に……飲もうと思えばもうちょっと飲めるはずだよ!」
あまりにも長い間漣が笑っていたので、悠樹は少しムキになってしまう。
いつまでも子ども扱いされるのも、何だか癪に障る気がした。
「いちおうもう二十歳なんだし……」
「解った解った……じゃあ、今日は少しだけ飲むか?」
「うん」
漣はキッチンの奥からいかにも高級そうなワインボトルを手にして戻ってくると、手早くそのコルク栓を抜いた。
そして、ふたつ並んだグラスに赤い色の液体を注いでいく。
片方のグラスを手渡され、漣に誘導されるままにグラスを合わせて乾杯した。
ちょっと口をつけてみると、この間のサワーなどとは違って完全に大人の味がした。
「これはゴクゴク飲まないほうがいいよね」
「当たり前だ。ワインなんてそんな飲み方をするものじゃないぞ」
「そっか……」
「危ないな……今日は一杯でやめておこう」
本気で心配になったのか、漣はさっさとワインボトルを片付けてしまった。
「別に片付けなくてもいいのに……」
「まあ……お祝いの意味で開けたワインだし」
「お祝い?」
「ちょっと遅くなったけど、誕生日おめでとう」
漣の言葉に、悠樹は驚いて目を見開いた。
「ありがと……ちゃんと誕生日のこと、覚えてくれてたんだ」
「何が欲しいのか解らなかったから……気に入ってくれるかどうか心配だけど」
そう言って漣はプレゼント包装された包みを悠樹に手渡した。
「え?いいの?ありがとう!」
まさか誕生日を覚えていてくれて、プレゼントまでもらえるなんて思わなかったから、悠樹は素直に感激した。
「開けていいの?」
「どうぞ」
そう言われて、悠樹はさっそくプレゼントをあけてみる。
中身はシックな色合いの手袋だった。
シンプルなだけに、その素材の良さや縫製の丁寧さが際立っていて、かなりの高級品であることが解る。
「ありがとう、大切にするよ」
悠樹がそう言うと、漣は微笑んだ。
少し前までは、漣にこうして誕生日を祝ってもらえるなんて思いもしなかった。
二度と会うことなんてないとまで思ったこともあったのに。
今はこうして、同じ部屋で同じ時を過ごしている。
いつの間にか飲み干してしまったワインの酔いも手伝って、悠樹は何だかとても幸せな気分になった。
「大丈夫か?」
心配そうに漣は悠樹の顔をのぞきこんだ。
「大丈夫!」
返事は元気だったが、体のほうはフラフラしていて安定感がない。
どうやらワインをグラスに一杯というのは、悠樹にとっては刺激的過ぎたらしい。
「グラス半分ぐらいにしておけばよかったな」
「大丈夫ってば……っもう……!」
大丈夫というわりには、ちょっとろれつも怪しかった。
はっきり言えば、すっかり出来上がっている。
「この間飲んだのは何だったんだ?」
「うーん……マンゴーサワー?」
「それを先に聞いておけばよかったな……」
そう言って漣は軽く頭を抱えたい気分だった。
マンゴーサワーとワインではアルコールの濃度もまるきり違う。
どうやら悠樹は、あまり酒に強いタイプではなかったようだった。
「漣兄さん……」
そう言って、いつもにはない大胆さで、悠樹は漣に抱きついてきた。
漣は戸惑いつつも、その体を抱きとめる。
「漣兄さん……好き……!」
「…………」
「本当だよ!?」
「解ったから……ちょっと水を持ってくる」
気分が悪くなりそうなほどの酔い方はしていないようだったが、とりあえず漣はグラスにミネラルウォーターと氷を入れて悠樹に差し出した。
悠樹は少しグラスの水を飲み、また漣に抱きついてきた。
「酔っ払っていなければ……本当に嬉しいんだけどな……」
漣が複雑な胸のうちを吐露すると、それに抗議するように悠樹がにらみつけてきた。
「だから、酔ってないってば……!」
「わかったわかった……」
「もう……信じてないでしょ……!」
「信じてる信じてる……」
まったく心のこもっていない言い方に、悠樹はさらにムキになる。
「本当に……ずっとずっと好きだったんだから……!」
「ありがとう……酔っていても嬉しい……」
「だから酔ってないってば……!」
悠樹がムキになればなるほど、漣はその様子がおかしくなってしまう。
「まだ笑ってる……」
悠樹はちょっとむくれながら、漣をにらみつける。
睨み付けたかと思えば、今度は瞳を潤ませ始めた。
「漣兄さんの馬鹿!」
「え……」
「俺の気持ちなんて……何も解ってくれないんだから……!」
「いや、あの……」
「何だか悲しくなってきたよ……」
「ご、ごめん……」
瞳を潤ませる悠樹を見て、ようやく漣は少しふざけすぎたことに気づいた。
酔っ払いの感情のゲージは、量りがたいものだと漣は思い知らされた気分だった。
「悪かった……」
そう言って、漣は悠樹を優しく抱き背寄せた。
「うん……」
生真面目に頷きながら、悠樹はキスをせがむように瞳を閉じた。
漣は素直に応じ、悠樹の唇に自分の唇を重ねた。
「……ん……っ……ん……っ……」
まるでもっと深いキスを求めるように、悠樹は漣の体に強くしがみついた。
漣の舌が悠樹の口腔の中に入ってくる。
その熱い感触に、悠樹はたまらなく幸せを感じながら、自らも舌を絡ませていく。
酔っているからだろうか……口の中までが性感帯にでもなったみたいに、気持ちいい。
しばらくの間、何度も唇を重ねあった後、悠樹は漣に囁いた。
「ベッドに行きたい……」
「ああ……」
漣は悠樹の体を軽々と抱き上げ、寝室へと運んでいく。



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EDIT [2011/09/02 17:37] Breath<SS> Comment:0
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