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「あ、これだ……間違いない……」
淳平は検索した画像に映る人物の姿を確かめ、ため息をつく。
そこに小さく写っているのは、文礼だった。
文礼からの告白を受け、淳平は彼のことを調べてみようと思ったのだ。
悠樹と中国を繋ぐものは、中国のとある華僑だった。
その華僑のことを調べているうちに、そこに一緒に写る彼の写真を見つけたのだった。
「あいつと関係があったのか……」
淳平にとってその華僑は、悠樹を苦しめた相手として認識されている。
あの時のはっきりとした事情は解らないが、悠樹が横浜方面へ向かい、そこで酷い目にあったのは事実だった。
横浜には、その華僑の別宅がある。
詳しいことを教えてもらえなかったものの、淳平は悠樹がそこで乱暴をされたのではないかと考えていた。

文礼という名で検索をしてみたが、それでは大した情報を得ることは出来なかった。
「兄さんに聞いてみるか……」
今日は兄が実家にやってくると言っていた。
兄は大学を卒業し、家業の酒造メーカーに就職し、その後順調に仕事を覚えながら役職を上げていっている最中だった。
その過程で、現在は関西地方の営業本部の統括をしており、住まいも一時的に関西に移しているのだ。
ただ、会議や会合の関係で、週の半分は東京で過ごしており、その際に実家に立ち寄ることがあった。
今はもう父の代理としてさまざまな宴席にも出席しているので、他の企業の動きやら情報にはけっこう詳しかった。
必要に応じてそれを淳平にも教えてくれることがある。
淳平もいずれは同じ会社に入社し、同じようにして会社の中枢になるためのステップを踏まなければいけないからだ。
淳平は10歳も年の離れたこの兄のことがけっこう好きだった。
姉は堅物だとか、融通が利かないなどと言って敬遠するが、淳平にはそうした部分が大人としての安定感に見えるし、頼りになると写っていた。
夜、家族で食事を終えた後、兄は淳平の部屋にやって来る。
だいたいそれがいつもの流れだったから、その時に文礼のことを聞いてみようと淳平は思った。



父と母、姉と兄を交えた久しぶりの家族がそろった夕食の後、淳平が予想したとおり、兄の聡史(さとし)が部屋にやって来た。
「関西はどう?」
淳平が聞くと、聡史は少し笑う。
「なかなか良いよ。食べ物も上手いし。人もみんな人懐っこいし。でも、週の半分いればいいほうだから、あんまり住んでる実感はないな……」
「だよな……やっぱり向こうではホテル住まいにしたほうが、何かと便利じゃないの?」
「まあ……いちおう向こうの営業本部の責任者なんだから、住んでるほうが何かと心証もいいだろう」
そう言って聡史は苦笑いした。
心証というのは社員に対してもそうだし、関西の財界の人間に対してもという意味だろう。
こういう部分で、聡史は実にそつがない。
まだ20代であっても、父が信頼を置く理由でもあった。
「兄さん、前に聞いた山国安泰保険公司の話だけど……」
「ああ、華僑の……汪劉燕(ワン・リウィエン)のグループ企業だな」
「うん……そいつに関連する人間で、文礼(ウェンリィ)っていう名前の人間はいるのかな?姓は解らない」
「ああ……あれかな。汪氏の愛人で、近々養子になるっていう話がある」
「なるほど……」
「汪氏は美少年ばかりを集めてハーレムを作っているなんて下世話な噂もあったけど、養子にってことは、けっこう本気だったのかもしれないな」
「へえ……そんな話があったんだ」
「ただ……汪氏に関しては妙な噂も流れている」
「妙な噂?」
「まあ、単なる噂だと思うが、汪氏は昔からかなりアクの強い人物で、苦手としている人も多かったんだが……最近はそのアクがかなり抜けてきているらしい」
聡史の言葉に、淳平は首をかしげた。
「それって別に、いいことなんじゃないの?」
「なんだが……ひょっとすると、汪氏の健康面に何か重大な出来事があったのではないか、とかね」
「ああ、だから死を前にして、人が変わったみたいにいい人なったっていうことか」
「そう。健康面で重大な出来事があると、そのように変わる人は多いからね。しかも、養子の話が出てきた」
「なるほど……」
「まあ、それもこれも、ゴシップの域だよ。頭の隅に入れておくだけでいい程度の情報だ」
「ありがと」
「悠樹くんの従兄弟の会社も、もう今は大丈夫なんじゃないかな? 一時は汪氏を憚って取引を躊躇する企業もあったけど、今はまた業績を伸ばしているみたいだしね」
「みんなどこでそんな情報を仕入れてくるんだろうなぁ」
「そんなのん気なことを言っていられるのも、今のうちだぞ?どんな些細な情報にもアンテナを張り巡らせておかないと、あっという間に取り残される」
「はー……兄さんも大変だなぁ……って、俺もそのうち大変になるのか……」
「そういうことだ。まあ、今は気楽にしてるといいよ。大学時代にしか学べないことも多いし」
「そのお言葉に、大いに甘えさせてもらうかな」
その後、聡史は最近の景気の状況や、企業の傾向、各酒造メーカーの動きなどを話して部屋を出て行った。
「愛人か……」
淳平は兄の去った部屋の中で、再びパソコンの画面を見つめていた。
確かに文礼は自分でも「所有物」であると言っていた。
しかし、養子になるということは、そこにそれなりの愛情が通い合っているということなのだろうか……。
しかし、いくら考えてみても、文礼自身が望んで愛人になっているとも思えず、養子の件も、彼の本当の意思とは違うような気がした。
そうでなければ、何故文礼はあんなに悲しそうな顔をするのだろう。
まるですべての愛を否定するみたいに。
文礼は、悠樹がああなったのは自分のせいだと言っていた。
自分がそう仕向けたとも。
それは、汪氏を使ってそうしたということなのだろうか。
「考えたからって解ることじゃないよな……」
淳平は苦笑して、彼の姿が写ったサイトを閉じた。
淳平にはどうしても文礼がそんな悪人には見えなかったし、むしろ、彼は何らかの被害者なのではないかとすら思った。
それは、出会うたびに文礼がろくな防寒着も身につけず、寒々しい格好をしていたということもあるのかもしれない。
「レポートでもするか……」
最初はレポートのためにパソコンを立ち上げたはずなのに、いつの間にか脱線していたことを思い出した。
また会うとは限らない相手のことを考えていても仕方がない。
淳平は自分にそう言い聞かせたが、気がつけば、文礼のことばかりを考えていた。




更新が大変遅れてしまってすみません。次回はもう少し早めに出来ればいいなと考えておりますm(_ _)m



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EDIT [2011/10/06 17:39] Breath<SS> Comment:0
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