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再び男を部屋に招きいれると、男はまるで自分の家のように、片足を投げ出し、背を壁にゆったりともたれかけ、くつろいだ様子になった。
(猫……どう見ても人間だろ……どこが猫なんだよ!?)
弘海は思いながらも、自分のためと相手の男のために熱いミルクティーを作った。
相手に好みを聞こうかとも思ったが、そこまでする必要はないと思いなおし、とりあえず自分が飲みたいものを一緒に作って出すことにしたのだ。
「これ、熱いから気をつけて」
そう言ってカップを差し出すと、男はカップを受け取った。
男は口をつけようとして思いとどまり、じっとカップを眺めた。
「ミルクティー……嫌いだった?」
弘海が不安になって聞いてみると、男は首を横に振った。
「いや……熱すぎて……」
(猫舌かよ!?)
弘海は心の中でだけ突っ込みを入れた。
口に出してしまえば、あっさりと認められてしまいそうな気がしたからだ。
しばらくして弘海のミルクティーも温くなり始めた頃になって、ようやく男はミルクティーに口をつけた。
普通に飲んでるから、嫌いなものではなかったということだろう。
「あの……名前なんていうの?」
沈黙が続いてしまったので、弘海はとりあえず聞いてみた。
「ショーン」
「外国の人なの?」
「この国の住人ではないな」
「変な言い方をするんだな……」
素直に自分の国を言えばいいだけの話なのに、何だかもったいつけているような言い方をするなと弘海は思った。
いろいろ聞けばいろいろ答えてくれそうな気はしたが、ショーンの口からはきっと、弘海に理解できないようなことばかりが出てくるような気がした。
(何だかちょっと変わってる……)
弘海がショーンに対して抱いた印象はそれだった。
「あのさ……家……ってあるの?」
「この国にはないな……」
「行く……ところは?」
「元の世界に戻りたいんだが……」
「元の世界?」
「俺の住処」
「それは……遠いのかな……?」
「戻り方が解らない……」
ショーンは初めて少し途方に暮れたような顔をした。
「飛行機……乗ればいいのかな?」
「飛行機で行ける場所ではないな……」
「じゃあ……車?」
「車なら、なおさら無理だろう……」
「じゃあ、どうやって……?」
「それは俺が聞きたい……」
ショーンは本当に困っているようだった。
困っている人を見ると、弘海は放っておけない性格だった。
昔からお人よしだと言われ続けてきたが、父親を失ってからいっそうその傾向が強くなったような気がする。
(怪我してるし、靴もないし……外は寒いし……)
後で後悔しそうだという気はしながらも、気がつけば弘海は口を開いていた。
「あ、あのさ、ここにいたらどう? 戻り方が見つかるまで」
「……いいのか?」
「う、うん! 俺はどうせほとんど仕事だし、それにショーンは怪我もしてるし……」
「助かる」
ショーンはそう言って初めて笑った。
その笑顔が何だかとても嬉しかった。
(ショーンって笑うと何か可愛いな……)
弘海がそんなことを考えていると……。
「……決めた」
男はいきなりそんなことを言った。
「決めたって……何を決めたの?」
「お前を伴侶にする」
「は?」
「異存はないだろう?」
「……あ、ある!!! あるよ!!! 伴侶って……確か夫婦とか恋人とかそういうものだろ!? 俺、そっちの気はないから!!!」
「異存があるのか……」
「あるに決まってるだろ!!! そんなこと言うなら、追い出すからな!!!」
弘海は怒鳴るように言った。
あまりにも興奮しすぎたせいで、肩で息をしているような状態だ。
「変なやつだな……」
「変なのはお前ののほうだ!!!」
「ふむ……まあ、気長に待ってやってもいい……」
「だから、ないから!!! 何十年……いや、何百年待とうとないから!!! そういうのは絶対に!!!!」
「何百年程度なら待ってやってもいいぞ」
「俺、生きてないし!!!!」
「俺以上にお前にふさわしい伴侶はいないと思うが……」
「俺は!!! 普通の女の子が好きなの!!!」
弘海がきっぱりとそう言いきると、ショーンは興味深そうな目で弘海を見つめてきた。
(目の色……変わってる……緑っぽいような黄色っぽいような……こういう色なんていうのかな……)
ショーンが外人だというのなら、目の色が違うのも別に不思議ではない。
それに今はカラーコンタクトをつければ、日本人だってブルーの目になることも出来るのだし。
そんなことを考えながらショーンを見つめていると、彼は薄く微笑んだ。
「俺の伴侶になれば……お前が望むことなら、何でも叶えてやるぞ」
「何でも…………なんて出来るわけないだろ!!!」
「出来るかどうか教えてやる……言ってみろ」
そこまで言われてしまうと、弘海はショーンの妄想や虚言を打ち破ってやりたい気持ちになった。
何でもできるといった男に出来ないことがあれば、これからはもう荒唐無稽なことを言いにくくもなるだろう。
どうせ言うなら、本当に自分が喜べるようなものにしようと弘海は考えた。
「じゃあ……お父さんに会いたい!お父さんは死んだけど、何でも出来るんだったら会わせてくれるよね!?」
弘海はムキになったように言った。
我ながら意地悪な希望だと思ったが、何でもできると言い切ったショーンが悪い。
まさか死んだ人間に会う方法なんで、この世にあるはずがないのだから。
「……出来なくはないが……いいのか、本当に?」
「い、いいよ! ほら、早くやってみてよ!」
「……ひとつ言い忘れていたことがあるが、俺は死んだ人間を生き返らせることだけは出来ない。会わせることはできる。それでもいいんだな?」
「いいよ! 早く! 何でも出来るんだったら、早くお父さんに会わせてよ!」
「……本当に後悔しないか?」
「するわけないじゃん!! 俺は毎日……お父さんに会いたい会いたいって思い続けているんだから!!!」
「……解った」
あまり気乗りのしない様子で、ショーンは立ち上がった。
立ち上がると、その背の高さに圧倒される。
部屋が小さくなったみたいに見える。
ショーンは弘海の額に手を伸ばしてきた。
「な、なに!?」
「いいから、目を閉じてみろ」
「……わ、わかった……」
何だかショーンの雰囲気がさっきまでとは明らかに違う。
何か大きなものを溜め込んだような緊張感みたいなのが伝わってくる。
弘海はおとなしく目を閉じた。
しばらくそうしていると、額に添えられていたショーンの手がそっと離れた。
「目を開けていいぞ」
言われて目を開けてみて、弘海は驚いた。
「お父さん……」
目の前に、ずっと会いたいと願い続けてきた父が立っていたのだ。



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EDIT [2011/12/29 11:00] 猫目石のコンパス Comment:0
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