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「お先に失礼します。お疲れ様でした!」
着替えを終えてもう一度厨房を覗き込んだ弘海に、橘は微笑む。
「ありがとう、残業助かったよ」
「いえいえ。明日もたぶん残業できると思います」
「無理しない程度に頑張ってくれると助かるよ」
「解りました。じゃあ、また明日」
店の外に出ると、もう辺りは真っ暗だった。
冬の夜は早い。
「寒い……」
今日はいちだんと冷え込みがきついようで、弘海はマフラーを喉元までたくしあげた。
「あ……」
店の前にショーンが立っていた。
「何で……ここにいるの?」
「お前を待ってた」
「よく……ここが解ったね」
「気配で探した」
気配で探したなどというとんちんかんな答えも、ショーンが言うと納得できてしまう。
「リュウスは?」
「家にいる。お前が追い出すなと言うから、俺が出てきた」
「ちゃんと話し合いはしたの?」
「したけど、平行線だ」
「平行線だ……じゃなくて、お互いに平行線じゃなくなるまで話し合わなきゃ駄目だろ……ホントにもう……」
弘海はため息をつきながらも、ショーンがリュウスを追い出すなという言いつけを守っていることに、ちょっとホッとした。
「とりあえず家に帰ろう。リュウスを一人きりにするのはかわいそうだよ」
ショーンは何も答えなかったが、弘海が歩き出すと一緒について歩き出した。
「そうだ、二人ともご飯食べてないよね?」
「……食べてない」
「帰ったら何か作るから、買い物して帰ろう。何が食べたい?」
「……オムライス」
「ショーンは本当にオムライスが好きだなぁ……リュウスも同じものでいいのかな?」
「……たぶん」
「いちおうオムライスを作ってみるけど……」
とりあえずマンションの近くのスーパーに二人で寄って、材料を買った。
荷物は全部ショーンが持ってくれた。
「リュウスって……いい子だよね。すごくショーンのことが好きみたいだし」
「…………」
「男同士で結婚とか、俺にはちょっと理解できないけど……でも、ああいう子と結婚したら、ショーンも幸せになれるんじゃないのかな?」
弘海の言葉に、ショーンは答えなかった。
なぜかリュウスの話になると歯切れが悪くなるショーンに、弘海はある可能性を思いついていた。
今日の仕事の後半は、そのことが気になって仕方がなかった。
弘海は思い切って聞いてみることにした。
「もしかして……国を出るまで魔力の補給をしてくれてたのって、リュウスだったの?」
ショーンは答えない。
違っていれば否定するだろうし、答えないということは、そうだと言っているようなものだと弘海は思った。
つまり、ショーンとリュウスはそういう関係だったのだ。
(何か……胸がもやもやする……)
ショーンだって言い訳でも何でもいいから何か言えばいいのに。
リュウスの話になると、まるで逃げるように口をつぐんでしまう。
そのことが弘海には苛立たしかった。
「どうして何も言わないの? やっぱり国でショーンの相手をしてたのがリュウスだったから? だから答えにくいの?」
「それはお前が知らなくていいことだ」
「そ、それはないだろ? 俺は十分、知る権利があると思うけど……」
「なるほど……とうとう伴侶になる決意でもしてくれたのか?」
「ち、違うってば! どうしてそういう方向に話を持っていこうとするのかなぁ……ここまでいろんなことに巻き込んでおいて、俺は知らなくていいことだなんて言い方は酷いんじゃないかって思うけど……」
気がつけばもうマンションの下まで来ていた。
弘海の中で、ショーンとリュウスは一線を越えた関係にあったということはほぼ確信に変わっていた。
胸の中のもやもやが、さらに大きく広がったような気がして、弘海は黙り込んでしまった。
エレベータの中は二人きりで、お互いに黙ったままだと息が詰まりそうだった。
「弘海……」
頭の上から声がかかって顔を上げると、すぐにショーンの唇が重なってきた。
「んっ……」
弘海はすぐにショーンを体ごと押しのけた。
「もう……こんなこと必要ないだろ……リュウスがいるんだし……」
「リュウスは伴侶じゃない……」
「俺だって……伴侶じゃないし……」
言い合っているうちに、弘海の部屋の階にエレベーターが到着した。

エレベーターを出てから部屋に戻るまでは、まったく会話がなかった。
どちらも押し黙ったまま部屋の前にたどり着き、鍵を開けて中に入った。
「あれ……何かいい匂いがする……?」
キッチンのほうから、香ばしいような食欲をそそるような……そんな匂いがしてきた。
不思議に思って部屋の中に入ってみると、リュウスがキッチンに立っていた。
「おかえりなさい。お食事を作ってお待ちしていました」
「あ……た、ただいま……」
「今日はショーンさまの好きな鶏のハーブ焼きにしてみました。足りない材料はすべて魔力で補いましたので、ほぼ国の味と同じだと思います」
にこにこと微笑みながら皿に乗せたチキンを差し出してくるリュウスは、まるで新妻のような楚々とした雰囲気をかもし出している。
「よ、良かったね、ショーン。俺は自分で料理を作るから、ショーンはリュウスが作ったのを食べさせてもらいなよ」
「いえ。弘海さんも一緒に食べましょう。ぜひ僕の料理を食べてみてください」
「そ、そうか……じゃあ……ご馳走になろうかな……」
何となく肩身の狭い気分になりながらも、弘海はテーブルに着いた。
皿に並べられたチキンは、焦げ目も食欲をそそるような焦げ具合で、火の入れ方は完璧だった。
その他にもパンのようなものや、野菜を煮たものなど、弘海が見たことのない料理が並んでいた。
「おいしい……」
味付けも、すべての人間が好ましく思うような完璧なものだった。
気がつけば、ショーンもおとなしく食べている。
(何だよ……オムライスなんて必要ないじゃん……)
弘海はまたもやもやとした気持ちになったが、リュウスがいるので口には出さなかった。
「おかわりが必要ならすぐにお持ちしますので、遠慮せずに言ってくださいね」
「あ、う、うん。すごいね、リュウス。俺、こんなに美味い料理食べたの初めてだよ」
「そう言ってもらえると、僕も嬉しいです。これから料理は僕が毎日作りますから、弘海さんはお仕事のほうを頑張ってください」
「あ、そ、そうか……助かるよ。ありがとう……」
「いえいえ。こうして僕とショーンさまを受け入れてくださる弘海さまに対するせめてものお礼です」
にこにこと微笑むリュウスにつられて弘海も笑顔を作ったが、心の中ではもやもやしたものがさらに広がっていた。



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EDIT [2012/01/23 08:10] 猫目石のコンパス Comment:0
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