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リュウスと一緒に外に出たのはいいけれど、予想通り、会話はほとんどなかった。
リュウスには弘海のコートを着せているので、見た目的には普通の人間と変わらない。
ただ、髪の色や肌の色、瞳の色が、リュウスが異国の人間であることをアピールしているようだった。
一緒に歩いていると、必ず通りすがる人が振り返る。
それほどリュウスの容姿は人目をひきつけるものがあった。
近所のスーパーは開いていなかったので、駅の反対側にある大型スーパーに向かう。
元旦ということで、初詣に出かけようとしている家族などが駅に向かって歩いていたりした。
「あ、あのさ……リュウスの国にもお正月みたいなことはあるの?」
「お正月?」
「ええと……年号が切り替わる日かな……一年の始まりみたいな……」
「ああ、そうですね……あります。でも、占い師がそれを決めるので、その年によって始まりと終わりは変わります」
「へえ……そうなんだ。それだと予定を立てるのが大変そうだよね……」
「国の行事予定はすべて、年の始まりと終わりが決まってから会議が行なわれ、そこで決まります」
「なるほど……じゃあ、四季なんてないんだ?」
「乾期や雨期はありますが、基本的にはあまりこの国のようにはっきりとした季節というものはないと思います」
「へええ……」
国が違うとずいぶんと違うものだと弘海は思った。
春夏秋冬というのは、日本人の弘海にしてみれば当たり前の感覚だったけれど。
そういうものもない上に、一年が365日でないとなると、もう弘海の想像の範疇を超えていた。
「弘海」
声をかけられて振り返ると、橘が車から顔をのぞかせていた。
「ど、どうしたんですか、橘さん!?」
弘海は慌てて車のほうに駆け寄った。
「ちょっと心配だったから弘海のマンションに行こうと思ったんだけど……見つけることが出来て良かった。彼は大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です。今朝は熱が下がり始めました。昨日は送ってもらってありがとうございました」
「それなら良かった」
ホッとしたように微笑む橘を見て、弘海は今日が元旦であることを思い出した。
「あ、あの……明けましておめでとうございます!」
「あ、そうか。おめでとう。今年もよろしく」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。三芳さんはもう帰られたんですか?」
弘海が聞くと、橘は苦笑した。
「二日酔いで死んでる」
「はは……飲み倒したんですね……」
「まあ……一年の終わりだったしね。どこか行くの? 送っていってあげるよ」
「あ、は、はい……あの、連れもいるんですけど、一緒にいいですか?」
「ああ、いいよ」
弘海は少し助かったという気分だった。
橘がいれば、リュウスと二人きりの重い空気からは少しの間だが解放される。
「リュウス、俺の働いている店のオーナーの橘さん。スーパーま送ってくれるって」
「はい……」
リュウスはテンションの低い返事をしたが、弘海が後部座席に乗り込むと、素直に車に乗った。
「弘海はけっこう友達が多いんだな」
「あの……リュウスっていいます。昨日の同居人の知り合いで……」
知り合いという言葉が不服だったのか、リュウスは黙り込んだ。
リュウスが日本人とは違うということに橘は気づいていただろうが、特に何も言ってはこなかった。
車の中では店の話や、昨夜の話で盛り上がり、弘海は少し気持ちが楽になった。
やはり橘は弘海にとっては心地よい存在だと改めて思う。
話をしているうちに、あっという間に目的のスーパーの前に着いた。
「着いたよ。帰りも送っていこうか?」
「い、いえ……それは申し訳ないですし。買い物に時間がかかるかもしれないので、大丈夫です」
「そうか……じゃあ俺はマンションに戻るけど、何か困ったことがあったらいつでも連絡しておいで」
「はい……ありがとうございます」
橘に礼を言って車を降りると、リュウスとの間の空気がまた気まずくなった。
「じゃ、じゃあ、行こうか」
「はい……」



ひと通り買い物を終えても、やはり会話はそれほど盛り上がらなかった。
主には弘海が話しかけ、それに対してリュウスが答えるという形だったのだが。
初めて会った時から人当たりの良い子だっただけに、こうなってしまうと弘海はお手上げだった。
弘海は早くマンションにたどり着かないかと思い、軽く息を吐く。
リュウスの気持ちもショーンの気持ちも解るだけに、下手なことは喋れなかった。
「あの……」
「ん?」
マンションの外観が見えてきた頃、リュウスが初めて自分から弘海に話しかけてきた。
「弘海さんにお願いがあるのですが……」
「な、なに?」
「嘘でもいいので、好きな人が出来たって言ってもらえませんか?」
「え……?」
「そうでないと、ショーンさまは貴方のことを諦めることが出来ないと思います」
「いや、でも……そんな……嘘でもいいなんて……」
弘海が戸惑うように答えると、リュウスはさらに詰め寄ってきた。
「弘海さんは、迷惑なんですよね? ショーンさまに想われるのは……」
「いや、迷惑というか……相手が男というのは、俺にはないなって思うだけで……」
「だったら、お願いします。ショーンさまは一国の主になられる方なんです。このままでは、国の安寧にも関わってきます」
「それは……そうだろうけど……」
確かに、国のことを考えれば、ショーンは絶対に弘海を選ぶべきでないと思う。
話を聞いただけでも、弘海の住む日本とショーンの国とではあまりにも何もかもが違いすぎる。
「先ほどのあの橘さんという方……あの方と少しの間だけお付き合いしていただくことは出来ませんか?」
「えええ? む、無理……だいたい橘さんも男だし……」
「どうやらあの人は弘海さんのことを好きみたいですし、話は早いと思うのですが……」
「いや……話が早いとかそういう問題じゃなくて……」
何かをリュウスに言わなければと思うのに、言葉が出てこなかった。
「少し考えてみてください。ショーンさまが幸せになるために、何がもっとも良いことなのか……国を代表して……お願いします」
リュウスはそう言って弘海に頭を下げた。



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EDIT [2012/01/29 07:50] 猫目石のコンパス Comment:0
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