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結局、正月二日目はぐだぐだのまま終わり、正月は三日目を迎えた。
この日、弘海は最初から予定を決めていた。
父の墓参りに行くつもりだった。
「二人で仲良く留守番しててね。ショーンは魔力がなくてすぐ風邪ひいたいるするかもしれないから、外をふらふら出歩かないように!」
弘海が墓参りに行くと二人に告げると、最初にショーンがついていくと言い、ついでリュウスもまたついていくと言った。
けれども、久しぶりだから、父と二人でゆっくり話をしたいと弘海がいうと、二人とも意外と素直に納得してくれたようだった。
やはり家族を思う気持ちというのは、国や文化が違っても共通しているものなのかもしれない。
父の墓は、弘海が住んでいるところから電車を乗り継いで2時間ぐらい先のところにある。
いわゆる田舎というに相応しい風景が広がる場所だ。
父は母との結婚後、実家とは疎遠になっていたが、葬式の席で何とか墓に入れてもらうことは渋々ながらも了承してもらった。
手続きに関する必要なことは祖父がしてくれたが、納骨には弘海が一人で行った。
血が繋がった息子が亡くなっても、過去へのこだわりを捨てられず、他人のような対応しか出来ない祖父に、弘海は改めて失望した。
墓にはそうした嫌な思い出もあるが、紛れもなく父が眠る場所でもあるので、その墓の前で掃除をしたり、手を合わせている間、弘海は何となく父と話をしているような気持ちになれるのだった。
「寒いなぁ……」
吹く風は冬の風で冷たく、弘海はマフラーを口元までたくしあげた。
墓苑の管理センターで水桶を借り、花や線香など、ひと通り墓参りに必要なものをそろえると、弘海は父の墓がある場所に向かった。
父の家系の先祖が代々眠る墓だから、見た目はけっこう豪勢な墓だ。
墓石にはここに眠る先祖の名前が刻まれていたが、そこに父の名はなく、とりあえず入れてもらったというその状況をよく物語っていた。
弘海はいつか、お金を貯めて父のために墓を買ってあげたいと考えている。
こんなに豪華な墓ではないかもしれないが、小さくても、父の名が刻まれた父のためだけの墓だ。
「父さん……俺、今年、正社員になるんだよ。店のオーナーも店長も、他のスタッフもみんないい人ばかりで、すごく恵まれていると思う」
誰も頼れる相手がいなくても、一人で何とか生きていくことが出来ているのは、あの店で働くことができたからだと弘海は思っている。
未成年でも、経済的に自立できれば、特に不便もなく生活はしていけるのだ。
「次に来る時は、もっといい報告がたくさんできるように頑張るよ」
弘海の休みが不定期だったり、この墓の場所までが遠いこともあるが、やはり他の親戚に鉢合わせする可能性を考えると、弘海はなかなか墓参りに来ることが出来なかった。
彼岸や盆などは、当然のことながら避けている。
墓石にも名前を彫らず、父をここまで他人扱いするような親戚とは、できる限り会いたくなかった。
今日は正月の三日で、盆や彼岸に比べると、親戚と鉢合わせする可能性は少ないが、ないともいえない。
弘海はもう少しゆっくりしたい気持ちはあったが、ひと通りの報告を終えたところで、もう帰ることにした。



「ただいま~」
弘海がマンションに戻ったのは、夕方近くになってからだった。
リュウスがいるので食事の心配はしていなかったのだが、とりあえず夕食の買い物だけはしてきた。
「あれ? リュウスは?」
部屋の中にはショーンだけがいて、リュウスの姿が見えなかった。
「出かけた。用事があるらしい」
「まさか、ショーンがリュウスに外に出るように言ったりしたわけじゃないよね?」
弘海が疑いの目で見ると、ショーンは肩をすくめた。
「そんなことをしたら、弘海が怒るだろう?」
「怒るよ! 本当にしてないの?」
「してない」
「それだったら、いいけど……」
何となく不審な気持ちになりながらも、とりあえずはショーンの言い分を信じることにした。
リュウスが帰ってくれば、本当のところも解るだろうし。
「ご飯はちゃんと食べてた?」
「ああ、リュウスが作っていったから」
「そっか……」
「久しぶりに、弘海の作ったのが食べたいな」
「贅沢だよ! あんなに美味しいご飯作ってもらって、そんなこと言ったら罰が当たるよ!」
「最近はあまり弘海の作った料理を食べてないしな……」
「元旦に作ったじゃん」
「オムライスが食べたい」
「オムライス……か……」
確かに、オムライスはしばらくの間、作っていなかったことを弘海は思いだした。
「いいよ。じゃあ、リュウスもいないし、夕食はオムライスにしよう」
「いいのか?」
どことなく嬉しそうな様子でショーンが聞いてきたので、弘海は思わず笑った。
「誰かがご飯を作らないといけないんだし。リュウスが作っていないんだったら、俺が作るよ」
オムライスぐらいでそんなに嬉しそうな顔をしてもらえるとは思わなかったので、弘海も何だかちょっと嬉しくなった。
確かに、ショーンにオムライスを作るのは久しぶりのことかもしれない。
キッチンに立って材料を刻んでいると、背後に人の気配を感じた。
振り向くと、いつの間にかショーンが背後に立っていた。
「な、なに? どうしたの?」
弘海が聞くと、ショーンは何も言わずに弘海を抱きしめてきた。
「体が冷たいな」
「そ、そりゃ……今さっき外から帰ってきたばかりだし……」
そうやってショーンに抱きしめられることに、何故か嫌な感じはしなかった。
ただ、抱きしめられたままでは、包丁も使いにくい。
「あのさ……オムライスが食べたいなら、離れてて。ちゃんと上手く材料が刻めないよ」
「そうだな」
くすりと笑って、ショーンは弘海の体から離れた。
材料を刻みながら、弘海はふと思いついて聞いて見た。
「もしかして……また足りなくなってきてる?」
「何が?」
「そ、その……魔力が……」
リュウスにはまったく何もしていないようだし、そうなると、魔力はショーンが倒れたあの日にキスをして補充をしたっきりということになる。
リュウスがいるから猫になって気配を消す必要はなくても、消耗していくものなのだろうか……。
「多少は減ってきてるな……」
「え? それってやばい?」
「いや……そう言えば、弘海は協力してくれるかと……」
「それってだまし討ちじゃん!」
弘海は馬鹿馬鹿しくなって、とりあえずオムライスの材料を一気に刻んだ。
「大丈夫だ。心配してくれてありがとう」
笑いながら礼を言われ、弘海は何だか自分が恥ずかしくなった。
「用がないんだったら、部屋に戻ってて。さっさと作ってしまうから」
「ああ」
弘海の言葉に頷いたかと思ったショーンの顔が、いきなり近づいてきて、唇が触れた。
それはすぐに離れていったけれども。
「ショーン!! 魔力は大丈夫なんだろ!!」
「今のは……弘海があまりにも可愛かったから我慢が出来なかった」
ショーンは部屋に戻っていった。
弘海は耳まで熱くなっているのを感じながら、乱暴にオムライス用の卵をかき混ぜた。



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EDIT [2012/02/03 08:40] 猫目石のコンパス Comment:0
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