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翌日は、朝から慌しかった。
結婚式前に身を清めるとかで、花がたっぷりと入った風呂に入らされ、これまでの中で一番重い衣装に着替えをさせられた。
白地に銀の刺繍が施された衣装の上に、紅い上着を羽織る。
重い上に裾が昨日までの衣装よりもさらに長く、歩くのに苦労するのが目に見えるようだった。
ショーンの衣装も、これまでの中でもっとも重厚で、弘海は思わず見とれてしまいそうになるほどだった。
弘海の衣装も、ショーンの衣装も、あまり男性的というわけではなく、かといって女性的なものでもなかった。
歩きにくさはあるものの、リュウスからこれがこの国の正式な礼服なのだと聞かされると、何となく厳粛な気持ちになった。
時間が来ると、リュウスを先頭に、何人かの人たちが弘海とショーンを迎えに来た。
その雰囲気が昨日とはまるで違っていたので、弘海は少し驚いた。
世間話をすることもためらわれるような、儀式独特の厳粛な空気が漂っていて、弘海は転ばないようにと祈るような気持ちでショーンの後に続いた。
昨日まではショーンの腕を頼りに歩いていたけれど、今日はショーンの後に続いて一人で歩かないといけないのだという。
頭の中は上手く歩けることばかりを考えていた。
ただ、この歩きにくい服装も二日目ということもあり、多少は上手く歩けるようになっていたことが救いだったかもしれない。
それでも儀式の会場に着いた時には、足がつりそうな状態だった。
「大丈夫か?」
ショーンも心配していたのか、声をかけてきた。
「う、うん……何とか……」
引きつった笑いを浮かべながら、弘海は答えた。
「少し力を抜いても大丈夫ですよ。儀式が始まるまでの間、待機になります」
リュウスがそう言ってくれたので、弘海はホッと息を吐く。
ショーンは司祭のような格好をした人と、何か話をしている。
弘海は傍らに控えるリュウスに話しかけてみた。
「あの人は何?」
「あれは祭典長です。今日の儀式を進行する神官です」
「へええ……」
儀式の打ち合わせをしているのかもしれない。
「ね、儀式って……ただショーンの横にいればいいの?」
「そうですね。基本的にはそれでいいです。揺り篭を受け取る時だけ、一緒に前に出て……」
「揺り篭!?」
「ええ。子を授かるために必要なものなんです。それをショーンさまと一緒に受け取ります」
「子供!?」
立て続けに驚愕する弘海に、リュウスのほうが戸惑ったような顔をする。
「あ、ええと……ショーンさまからは何も説明はありませんでしたか?」
「……ない」
「あまりにも普通のことだったので、あえて説明しなかったのでしょうね」
「普通……なんだ……」
「はい。弘海さんの国では男女が営みを行ない、女性の体に子が宿ります。そうですよね?」
「う、うん……」
「この国では、伴侶と愛を育むことにより、子が誕生します。伴侶は男性同士でも、女性同士でも、もちろん男女でも構いません。子供は誰かの体の中から誕生するわけではなく、揺り篭の中に現れるんです。王族の揺り篭は、お城の中の魔法で厳重に守られた特別な部屋の中に収められます」
「へええ……じゃあ、王族じゃない人の揺り篭は?」
「それも、同じように収める場所があります。王族以外の人たちの場合は、たくさんの人たちでその場を共有することになりますが、国の中でも大切な施設なので、魔法で厳重に管理指されています」
「すごいねぇ……そんなシステムなんだ……」
弘海が感心するようにため息をつくと、リュウスは頷いた。
「だから結婚式は、その揺り篭を受け取って、それを収めるべき部屋に収めるまでの儀式なんです」
「そうなんだ……じゃあ、俺とショーンの子供も……いつか誕生するってこと?」
「それまでちゃんと愛を育み続ければ」
「へええ……すごいなぁ……」
ひたすら感心するばかりの弘海に、リュウスは苦笑する。
「他人事じゃないんですよ。今日は弘海さんの結婚式なんですから」
「あ、う、うん……そうだよね。何か……つい、夢の中にいるみたいな気分になっちゃうんだ」
「もうじき儀式が始まりますよ。緊張し過ぎなくていいですから、しっかりと揺り篭を受け取ってきてください」
「うん……頑張ってくる」



やがて儀式は始まった。
緊張し過ぎなくていいとリュウスに言われたけれども、やはり緊張してしまう。
大勢の目が弘海とショーンの儀式を見守っていた。
ともかく、転ばないように気をつけて儀式の進行をつとめる祭典長の前にショーンと並んで立った。
祭典長が何かを唱え、手を振りかざすと、上方からゆっくりと何かが降りてきた。
近づいてくると、それが揺り篭の形をしているのが解った。
ショーンに目で促され、それを受けるように手を差し出した。
二人の腕の中に収まるように、揺り篭がゆっくりと降りてくる。
やがてそれは、弘海とショーンの腕の中にすっぽりと収まった。
あとは揺り篭をもって、魔法で厳重に保護された部屋へ行くのだが、それはどこへ行けば良いのだろう……そう思っていると、祭典長が杖を振り上げた。
光がふわふわと風になびくようにやって来たかと思うと、それが階段の形になった。
「うわぁ……」
あまりにも綺麗なその階段の登場に、弘海は儀式中だということも忘れて声を上げてしまった。
揺り篭を二人で支えるようにして持ちながら、ゆっくりと階段を上っていく。
一段のぼると、数メートルほども進む不思議な階段だった。
階下の祭典長や、ショーンの父、リュウスや儀式を見守るたくさんの人たちの姿がどんどん小さくなっていく。
不思議な仕組みの階段のおかげで、転ぶ心配はなくなった。
慎重に一段階段を上れば、どんどん上に上がっていく。
やがて目の前に扉が現れた。
二人とも両手が揺り篭を支えるために塞がっているのに、どうやって扉を開けるのだろうと思っていたら、扉のほうが勝手に開いた。
一歩階段を上ると、驚いたことにその部屋の中に入っていた。
部屋の中にはいくつかの揺り篭が配置されていて、中央に揺り篭ほどの大きさの光だけの空間があった。
おそらくあそこに揺り篭を収めるのだろう。
ゆっくりとショーンと一緒に歩いていき、光の中に揺り篭をそっと置いた。
光だけにしか見えないその空間に、揺り篭はまるで浮いているようにきちんと収まった。
弘海がホッとするのと同時に、ショーンも安堵するように微笑んだ。
「無事に終わったな」
「うん……すごく緊張したけど」
「もう緊張するような場面はないから安心しろ」
「うん……」
ショーンと一緒に、光の中にふわふわと浮く揺り篭を見た。
ここにいつか自分とショーンの子供が現れるのかと思うと、何だかとても不思議な気分になった。



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EDIT [2012/02/18 08:32] 猫目石のコンパス Comment:0
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