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帰宅途中に夕食の買い物をして家に戻った弘海は、橘にもらったエスプレッソマシーンでエスプレッソをいれ、それを飲みながらひと息ついていた。
明日にはショーンに会えると思っていたけれど、とりあえず明日は来れないらしい。
次にいつ来るのかという返事はまだ来ていないから、今回みたいに五日も会えない可能性だってある。
リュウスの話によると、国のほうがいろいろ大変だから、もっと会えないという可能性もあるだろう。
「はぁ……今朝会ったばかりなのにな……」
弘海の場合、自分の恋愛感情に気づいたのが結婚の直前だったから、今もまだその熱は冷めていないし、それどころか結婚以前よりもずっとショーンのことが好きになってしまっている。
本当は毎日でも会いたい気持ちはあるけれど、今の生活を捨ててショーンの国に行くという選択肢は今のところ考えていなかった。
「でも……こんな調子で会えない日が続いたら考えてしまうな……」
橘のようなパン職人になりたいという夢はある。
でも、もしもあの国で暮らさないとショーンに会えないというような状況が来たら、弘海はきっと悩んでしまう気がする。
結婚する前なら迷わずにショーンを諦める道を選んでいただろうが、今はもう結婚もしているわけだし、それが認められる国だし、何度も体を重ねているし。
何よりも好きだという気持ちが、以前とは比べ物にならないぐらいに強くなっている。
どちらかを選ばないとならない状況なんて来なければ良いのにと思うが、ショーンの国や彼の立場がこれまでにはなかったような状況になれば、そういう可能性も出てくるのかもしれない。
「考えても仕方がないか……」
未来の可能性なんて、考えても仕方がない。
時間の無駄だと思う。
それを考えなければならない時がもし来たら、その時に考えれば良いのだ。
「よし、ご飯つくろうっと」
弘海は後ろ向きな気分を振り払うように軽くかぶりを振って立ち上がり、ふと思いついて玄関に向かう。
そろそろリュウスが帰ってくる時間だ。
自分の左隣がリュウスの部屋なのだが、インターホンを押してみる。
すぐに扉が開いてリュウスが顔をのぞかせた。
やはり部屋に戻っていたようだ。
「お疲れ様」
「弘海さん、どうかしました?」
「いや、別に何もないんだけど。今からご飯作るから一緒にどう?」
「そうですね。ではご一緒させていただきます」
「何か食べたいものある?」
「弘海さんの都合でいいですよ。でも、出来たら何か日本食っぽいものがいいです」
「日本食か。うん、解った。じゃあ、鍋にしよう」
「鍋?」
「鍋知らない?」
「知りません。たぶん、まだ食べたことがないと思います」
「本当は冬の食べ物だから、ちょっと時期外れだけど。まあ準備して待ってるよ」



部屋に戻った弘海は、さっそく鍋の準備に取り掛かる。
材料は夕食用に買ってきたものと、買い置きしてあったものでで何とかなりそうだった。
ダシをはった鍋をカセットコンロの火にかけている間に、野菜を切ったり、鶏肉を叩いてミンチにしてをつくねを作ったりする。
考えてみれば、誰かと鍋をするのは久しぶりだ。
ショーンはリクエストといえばオムライスが定番なので、まだ鍋を一緒につついたことはなかった。
鍋の中の出汁が沸いて来たので、ちょっと味見をしてみる。
「うん、美味しい」
久しぶりに作るにも関わらず、けっこう覚えているものだと自分で自分に少し感心した。
そんなことをしているうちに、リュウスがやって来た。
「鍋って、鍋を使うから鍋って言うんですね」
部屋の中に用意された鍋を見て、リュウスは納得したように言った。
「ああ、そうなのかな。昔から鍋って言ったら鍋だから、名前の意味なんて考えたことなかったよ」
弘海はさっそく鍋の中に野菜を放り込んでいく。
「何か手伝うことはありますか?」
「あ、じゃ、大根おろしてもらっていいかな?」
「はい」
リュウスは素直に頷いて、キッチンでおろし金を使って大根をおろし始める。
どちらもそこそこ料理が出来るから、役割を分担できるのが便利だった。
今までもこうしてお互いの家で一緒にご飯を食べたり、お茶をしたりという交流は何度かあった。
ショーンが急に来れなくなった時などは、リュウスのほうが気を使って誘ってくれたりすることもある。
離婚待ちだとか、何だかんだ言いながらも、リュウスは弘海のことを気遣ってくれていた。
「いい匂いがしてきましたね」
「うん、もうすぐ食べれるよ」
蓋をした鍋がぐつぐつと音を立てて煮立っている。
そろそろ野菜も柔らかくなり、つくねの出汁も出ている頃だろう。
弘海は鍋の蓋を開け、仕上げに菊菜と豆腐を入れていく。
「美味しそうですね~」
リュウスが嬉しそうに鍋を覗き込んでいるのを見て、弘海も嬉しくなってきた。
「うん。本当は寒い冬とかに食べるのがいいんだけどさ。夏になったら本当に食べれなくなるから、今のうちにと思って」
「そうですね。確かに真夏に鍋はきつそうですよね」
取り皿の中に大根おろしをいれ、そこに鍋の中の具材を入れていく。
それを先にリュウスに渡した。
「好みでそのポン酢を入れて食べるといいよ。あ、七味もいいな」
「ありがとうございます」
弘海も自分の取り皿に具材を入れて、久しぶりの鍋を堪能した。
「美味しいですね」
「そう? 口にあって良かった」
「こういうあっさりした料理って、僕たちの国にはないから面白いです」
「うん? やっぱり日本独特なのかな。海外の料理をそんなに知ってるわけじゃないけど」
やっぱり鍋っていいな、と弘海は日本人らしいことを思い、野菜を足したり、つくねを入れたりする。
「そういえば……弘海さんが帰ってしばらくした後、とうとう喧嘩になってましたよ」
「ええっ!?」
食べている途中の衝撃的なリュウスの報告に、弘海は思わずむせて咳き込んだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「う、うん……喧嘩って……橘さんと三芳さん?」
「はい。理由はよく解りません。でも、厨房の隅で喧嘩になったみたいで……橘さんがすごく怒ってました」
「ええ……何があったんだろう……」
「僕は定時になって帰ってきたので、その後お二人がどうなったのかは知らないんですが……」
「そっか……」
スタッフの前で二人が喧嘩をするなんてよっぽどのことだ。
しかも、橘が三芳に対して怒ったのだという。そんなことはこれまで絶対にあり得ないと思っていた。
「弘海さん?」
「あ、う、うん、心配だね」
「そうですね……いつもお二人は仲が良いものとばかり思っていましたから……」
確かにリュウスの言うとおりだ。
まるでじゃれ合いのような喧嘩なら、しょっちゅうしているけれども。
本気の喧嘩を二人がしたところを、弘海も見たことなかった。



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