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「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
橘と三芳の話を聞いて場は少し盛り下がってしまったものの、二人ともよく食べた。
結局、準備した野菜やつくねはほとんどなくなって、最後はご飯を入れて雑炊まで作った。
それも残さず食べて、リュウスも満足そうな様子だった。
「残った煮汁で何かを作るというアイデアは素晴らしいですね。ぜひ国の料理でも試してみたいと思います」
「うん。試作品が出来たら教えてよ」
「はい。弘海さんに一番に味見をしてもらいますね」
食後のお茶を飲みながらリュウスととりとめもない話をしながらも、弘海は橘と三芳のことが気になっていた。
さすがにリュウスに事情を話すわけにはいかないから、弘海は何も言わなかったけれども。



「では、ご馳走様でした。僕は部屋に戻りますね」
「うん。片付けまで手伝ってもらってありがとう」
リュウスは洗い物など、きちんと最後まで後片付けまで手伝い、部屋に戻っていった。
リュウスがいなくなり、一人になると、弘海はまた橘と三芳のことが心配になった。
「どうしたらいいのかな……」
弘海に出来ることがあるのかどうかは解らない。
けれども、このまま二人が気まずい関係になってしまうことは、仲の良い二人の姿を知っているだけに耐えられそうになかった。
それに、二人三脚で店を大きくしてきた二人が仲たがいしてしまえば、どちらかが店を去ってしまう可能性だってある。
「二人がいるから、店は上手くいっているようなものなのに……」
役割分担がとても上手く出来ていると思う。幼馴染の気安さというのも、大きいかもしれない。
「明日……ちょっと話してみようかな……」
少なくとも、多少なりとはいえ事情を知っているのは、二人以外のスタッフの中では自分だけだ。
だからこそ、何かできることがあるのではないかと、弘海は思った。



翌日、いつものように店に行くと、いつものようにすでに橘が作業を始めていた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
やはり、いつもの橘とはどこか違う。
表情が硬い気もするし、元気がないようにも感じる。
「あ、あの……」
作業を開始する前に、弘海は思いきって橘に声をかけてみた。
「すみません、余計なお世話かもしれないんですけど……昨日、三芳さんと喧嘩になったんですか? リュウスから話を聞いて……他のスタッフも、三芳さんと橘さんがぎくしゃくしていることに気づいているみたいです」
橘は作業の手を止め、少し自嘲するように微笑んだ。
「ああ……ちょっと昨日は感情的になりすぎて……確かに他のスタッフには気を使わせてしまったかもしれない」
「俺……事情を全部知ってるわけじゃないですけど。橘さんと三芳さんって、いつも仲が良いように見えるから、みんな心配しちゃってるんだと思うんです。その……何かあったんですか?」
「弘海は昨日ここで宗助と話してたこと、聞いてたんだっけ?」
「はい……でも、全部というわけではなくて……少しだけですけど」
「宗助との考え方の違いかな。宗助がこの店を手伝ってくれる前、俺は全部一人でやっていた。俺はパン作りの技術は学んだけど、経営に関してはほとんど独学だった。そのせいで、たくさんの間違いもあったり、マイナスの方向へ行くようなことも気づかないうちにしてたんだ」
「そうなんですか……」
「でも、宗助が来てから、それが間違っているとか、こうしたほうがいいとか、的確にアドバイスをくれるようになって。ようやく店は経営的にも軌道に乗り始めたんだ」
以前にそういう話を弘海も聞いたことがある気がした。
一人で何もかもを背負い続けていた橘を見るに見かねて、経営の知識がある三芳が手伝い始めたのだと。
三芳は経営の知識だけでなく、才能もあったのだろう。
その後は店はどんどん成長を続け、今は不況の中でも危ういところがないほどに磐石になった。
橘は話を続ける。
「問題は宗助が手伝ってくれるようになる前にメインバンクだった銀行の話でね。地方銀行だけど、今でも優良な銀行のひとつで。ただ、俺の個人的な問題があって、そことの取引をやめて、別の銀行と取引をすることになったんだ」
「でも、今もその銀行とは取引があるんですよね?」
「うん……メインバンクは変わってしまったけれど、多少の融資も受けているし、いろんな繋がりがある。うちのパンの扱い先を増やしてくれたりもしているし。金の話だけじゃなくて、本当に世話にはなっているんだ」
「そうなんですか……それだと、あまりいい加減な扱いは出来ないですよね」
「うん。だから、俺は誘われれば個人的も会うし……それが宗助には気に入らないみたいなんだ」
弘海は思わず首をかしげた。
「どうしてなんでしょう? 個人的に会うっていう部分では、三芳さんが口を出すようところではない気がするんですけど」
弘海が素直に疑問を口にすると、橘は少し言いにくそうに言葉を濁した。
「それはまあ……宗助はいろいろと事情を知っているから。彼がああ言う気持ちも解るんだ。でも、宗助は完全にその銀行を切ろうとしている……」
「ええ? でも、お世話になってるんですよね?」
「俺としては、そう思っている。でも、宗助に言わせると、それは世話ではなく……」
橘は言いかけて、口を噤んだ。
「ごめん……まあ、そういう事情なんだ。だから経営に関わることではあるけれども、かなり俺の個人的な事情や、宗助の個人的な感情も絡んでいる話で……」
「そうなんですか……」
「ともかく、弘海や他のスタッフにあまり心配をかけないようにするよ」
橘はいつものように優しく微笑んだ。
弘海はもうそれ以上何も言えなくなってしまった。



結局、その日も橘と三芳の関係は修復したような様子もなく、喧嘩をするところまでは行かなかったが、ぎくしゃくとした雰囲気が二人の間に漂っていた。
「はぁ……」
事情は聞いたものの、二人がこじれている肝心の部分までは聞くことが出来なくて。
弘海は何となく胸に何かが引っかかっているような感じで店を出た。
ただ、橘が詳しく事情を話してくれたのは、弘海をそれなりに信用してくれていたのだろうと思うと、そのことについてだけは少し嬉しかった。
マンションの扉を開けて部屋に入ると、人の気配がした。
弘海は最初は驚いて、ついで嬉しくなった。
「ショーン、来れたの!?」
「ああ」
まるで飛び込むようにショーンの体に抱きついた。
来れないと聞いていたのに会えると、嬉しさは何倍にもなる。
「いろいろ大変だったんじゃないの?」
「大変だったけど、何とか落ち着いた」
「明日の朝、帰る?」
「今回は少し長くいれそうだ」
「本当!? じゃあ、明後日は定休日だから、それまでいれたらどこかに遊びに行こうよ」
「ああ、いいぞ」
無邪気に喜ぶ弘海に笑って、ショーンは唇を重ねてきた。
キスの先まで進みそうな予感を感じさせそうな口付けだった。
その予想通り、ショーンは唇を重ねながら、強く弘海の体を抱きしめてきた。



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