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ボートを降りた後は、公園の広場で少し遅い昼食を食べることにした。
完璧なお弁当は作って来れなかったけれど、おにぎりと玉子焼きとサラダだけは作って保冷のランチバッグに入れて持って来ていた。
「この辺りでいいか」
見晴らしの良い芝生の上を見つけて、折りたたんだレジャーシートを広げる。
「ショーン、そっちの端っこ引っ張って」
「これ?」
「うん、それ。引っ張って皺を伸ばして」
ショーンは几帳面に端っこまできちんと皺を伸ばしてレジャーシートを整えてくれた。
それを見ながら、弘海は何だかちょっと不思議な気持ちになった。
「考えてみたら、ショーンって王子様なのにさ、ボート漕いでもらったり、レジャーシート広げてもらったり……何かすごく図々しいよね、俺って……」
ショーンはちょっとビックリしたみたいな顔をして弘海を見た。
「そんなことを気にしてるのか?」
「だってさ……お城にいたら、何でもしてくれるんだろ?」
「それはまあ、そうだが……別にそれが良いというわけでもないぞ」
「そんなものなのかな……うん、そうかもしれないね」
弘海はショーンの国へ行った時のことを思い出した。
何もかもの世話を焼いてもらえるけれども、その時の居心地の悪さ、落ち着きのなさというのは、何ともいえないものだった。
それは弘海が日本での生活に慣れてしまっているからだと思っていたのだが。
ショーンも似たような感覚を持っているのだろうか。
「はい、ちゃんと手を拭いてから食べてね」
弁当を広げながら弘海はウェットティッシュをショーンに手渡した。
それを受け取りながらショーンは、
「俺は……弘海がこうして何かを言ってくれたり、構ってくれたりするのが素直に嬉しい。他の他人に何をしてもらっても、感謝はするが、特に嬉しいとは思わない」
「で、でもさ……構ってるって言っても、ボート漕ぐのなんかは力仕事を押し付けてるわけだし、あれしてこれしてってお願いするのも、雑用を押し付けてるだけだし……」
「それでも、いいんだ。弘海だから」
「そ、そんなもんなんだ……」
ショーンはよほど心が広いのだろうと弘海は思いつつも、嫌な気持ちはしなかった。
むしろ、少し嬉しい。
ショーンはレジャーシートの上に広げたお弁当を覗き込んでくる。
「これ、食べていいのか?」
「うん。どうぞ。本当はもっと豪華にしたかったんだけど……朝はそんな元気なくて……」
「いや、十分だ。いただきます」
ショーンは生真面目に言ってから、おにぎりをひとつ、ひょいっとつまんだ。
「美味い」
「そう? 普通のおにぎりだよ? 中身も鮭のフレークとツナマヨだし」
「こっちは鮭か」
「かな? これがツナマヨ」
「次はそれを食べよう」
「玉子焼きとサラダもあるよ」
「それも美味そうだな」
自分の作ったものを、誰かが喜んで食べてくれるというのは、弘海にとっては格別に嬉しいことだった。
父が病で入院して以降、弘海は自分で作ったものを自分一人で食べるという生活を送っていた。
父が亡くなってからもそれは同じで、ずっとそういうことが続くのだと思っていた。
けれども今は、こうして自分の作ったものを味わって、喜んでくれる人がいる。
これは本当に幸せなことだと弘海は思う。
「うん、ツナマヨも美味いな」
「そう? 俺の分も食べていいよ」
「弘海は食欲がないのか?」
「そういうわけじゃないけど……でも、ショーンのために作ったものだから、ショーンに食べてもらったほうが嬉しい」
「そういう理由ならもらう」
ショーンは笑っておにぎりを口に放り込んだ。
お弁当を食べ終わってお茶を入れて、あとはのんびりと公園の風景を眺めた。
「三芳さん……夕方にまた来るって言ってたよね」
「ああ、言ってたな」
「また何か話が聞けるかな?」
「いや……あのポケットに忍ばせておいた葉が駄目になったみたいだから、今日は諦めたほうがいいだろうな」
「そっか……でも、昨日と今日でずいぶん情報もわかったし……しばらくはそれで対策を考えてみるしかないか……」
「そうだな……三芳さんのほうと話をしてみるのもいいんじゃないのか?」
「うん……それもいいかも。明日店に行ったら、ちょっと話してみるよ」
「ああ」
ショーンの返事に頷きながら、弘海は思わずハッとした。
「ごめんね。せっかく二人で一緒の時間なのに……俺のことばかり気遣わせて……」
考えてみたら今日はデートのはずだった。
それなのに、店の話をしていた時間のほうが長かったような気がする。
何だか急に申し訳ない気持ちになってきた。
落ち込みそうになる弘海の頭に、ショーンの大きな手のひらがぽんと乗せられた。
「弘海が気がかりなことは、俺も気がかりなことだから気にするな」
「うん……でも、明日まではちょっと忘れることにするよ」
やっぱりせっかくショーンと二人きりの時間なのだから、その時間も満喫したい。
弘海はそう思い、隣に座るショーンの体に寄り添う。
陽だまりの中、ショーンの唇が優しく重なってきた。



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