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 ヒルコの狙いはアマツを自分たちと同じように高天原から追放することだった。秋津師比売命の後ろ盾がある限り、多少のことではそれは難しい。けれどもヒルコは秋津師比売命ごとアマツを高天原から追放することを考えているようだった。
 トミビコの行動は完全にアマツに対する裏切りだった。けれども、ヒルコに弱みを握られてしまっている以上、どうしようもなかった。その上に心が完全に壊れてしまっているアハシマに対して、ヒルコはさらに追い詰めるような幻覚を見せたりする。おかげで一時は笑顔さえ見せることが出来ていたアハシマは、今はもう廃人同然にまで追い込まれていた。
(また何か追い詰めるようなことをしたら……アハシマさまは……)
 ヒルコは巧みにアハシマさえも人質として使うことに成功していた。
 もとはといえば、トミビコがアマツのために自分の力を使って何かが出来ないかと身に余ることを考えてしまったのが原因だ。
 トミビコはいつもそうだった。深く考えずにうっかりと行動してしまう。自分でそこが駄目なのだと分かっていても、また同じ過ちを犯してしまうのだ。
 そのせいで大好きなアマツを追い詰めることになってしまっている自分を理解しつつも、まるでヒルコが張った蜘蛛の巣の糸に絡まったみたいになってしまっている。
(もしも……)
 アマツと陸が引き離され、二度と会えなくなってしまえば、アマツは自分のことを見てくれるだろうか……。
 一時的にはアマツを危機に陥れてしまうことになるかもしれないが、たとえアマツが高天原を追放されてしまったとしても、トミビコはどこまでもついていくつもりだった。そしてそのほうが、トミビコがアマツにとっての唯一の存在に……今の陸のような存在になれる可能性が高いのではないか。そんな都合の良い想像をしてしまう。
 陸にはかわいそうな結果になるかもしれないが、少しの間とはいえ、アマツの愛を一身に受けることが出来たのだから、その幸福はすでに一生分ぐらいはあるだろう。
(それだけがせめてもの……)
 トミビコは胸の前でぎゅっと手を握り締めた。



「方法が見つかりました」
 トミビコのその言葉に陸は予想通り目を輝かせた。
 一方のアマツのほうはまだ喜んでいるような様子はない。方法を最後まで聞くまでは、安心できないと考えているのだろう。
「それはどういう方法なのだ?」
 アマツが慎重に聞いてくるので、トミビコは断言するように言った。
「陸さまにはいったん根の国に行っていただきます」
「え……ね、根の国って?」
「そういう世界があるのです。陸さまの住む世界でもなく、この高天原でもない世界が」
「トミビコ、それは駄目だ」
 アマツは即座に言った。けれども、トミビコもひるむ様子は見せない。
「ですが、これしか方法はありません。さまざまに手を尽くして調べてみましたが、それ以外の方法はありませんでした」
「ならば、もうなかったことにしよう。いくら何でも根の国とは……」
「アマツ……少しぐらい危険でも、俺はやってみる。何度もそう言ったじゃん」
「しかし……」
「アマツさまが心配するのもごもっともです。危険がまったくないとは申し上げません。ですが、最善は尽くします。陸さま次第では、何事もなくあっさりと高天原に戻ってくることも可能かもしれません」
「俺次第?」
「はい。根の国で、陸さまにはいくつかのことをしていただかなくてはなりません。ですが、あちらの住人になりきっていただければ、危険はそれほど高くはないと思います」
「そ、そうか……ちょっと怖いけど、俺やってみたい。それってどんな……」
 アマツが陸の言葉を遮るように、その肩に手を乗せる。
「陸……ちょっとトミビコと話をさせてくれ」
「分かった……」
 すっかり乗り気になっている陸の熱を冷ますようにアマツは言った。部屋を出ているように促され、陸は一人で部屋を出た。



「何だろう……俺が根の国ってところに行ってすることって……」
 部屋を出た陸は、宮殿の中を歩きながらぼんやりとそのことを考えた。アマツはあまり乗り気ではないことはその雰囲気から分かった。それはどうやら根の国という場所が危険だからのようなのだが。
 でも、その危険を冒さなければ、陸がこの世界に留まることはできないのだ。だとしたら、陸にはトミビコの言う方法をやってみることしか選択肢はない。
 しばらくの間、部屋の外をうろうろしていると、やがてアマツが苦い顔をしながら歩いてきた。
 そして陸の顔を見るなり、首を横に振る。
「駄目だ、危険すぎる。トミビコが提案した方法はなかったことにする」
「え? で、でも、それしか方法はないんじゃ……」
「行き先が根の国というのは危険すぎる。とても陸ひとりを行かせるわけにはいかない」
「だ、大丈夫だって。ちゃんとしていればそれほど危険じゃないってトミビコも言ってたし……」
 憤る陸を落ち着かせるように、アマツは陸の背を撫でてくる。
 そして庭にある四阿に導くと、そこに座るように言った。
 アマツは陸と目線を同じ高さにすると、根の国という場所について語りだした。
「根の国というのは、その名の通り、下界のさらに下界にある世界のことだ。そこに住むのは生を終えた者と、生が始まる前の者……」
「え……も、もしかして……死人の世界ってこと?」
 陸は思わず目を見開いた。
「そう。その言い方が陸には分かりやすいかもしれない。中津国と高天原はある程度の関わりがあるが、根の国とはほとんど関わりがない。だから、陸が根の国に行くとしたら、陸を守る術がないのだ」
「そ、そうか……」
 根の国が死者の世界なのだと聞いて、陸は少しひるんだ気持ちになる。さすがにそんな場所にたった一人で行くのはこわい。
 だけど……。
「でも……本当にそれしか方法がないのなら、俺は行きたい。いや、行ってくる。それでアマツと離れずに済むのなら」
「それは駄目だ。俺が許可しない」
「でも、アマツ……」
「たとえ離れ離れの世界にいようとも、陸が無事であることが俺の望みだ」
「だけど、それじゃあ……もう俺たちは二度と会えないってことになる……」
「それでも、陸を根の国に行かせるぐらいなら、そのほうがまだいい」
「俺は良くない」
「ともかく、この話は忘れてくれ。トミビコには他の方法を探してみるように伝えてある」
「アマツ……」
「すまないが、今夜は一人で眠れるか?」
「あ、う、うん……」
「少し片付けてしまわないといけないことがある。悪いな……」
「うん……大丈夫だよ……」
 陸は微笑んで答えたが、本当はこんな夜にこそアマツの体温を感じていたかった。



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EDIT [2012/10/21 08:13] 高天原で恋に落ちた Comment:0
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