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 高天原を飛び出して、いったい何日経っただろう。
 陸は自分の行動を激しく後悔していた。やはり迂闊に高天原を飛び出すべきではなかったかもしれないと。
 でも、あの時の陸にとっては、アマツとこの先ずっと一緒にいるために必要な行動だったのだ。この根の国にあるという竪琴を探し出し、高天原に持ち帰ることが出来れば、陸はアマツとずっと一緒にいることが出来る……。
 しかし今の陸は完全に囚われの身で、自由に部屋の外に出ることもできない。
 体を洗うために水場へ行く時には部屋を出ることが出来たが、常にアハシマが付き添っていた。
 今もアハシマと一緒にその水場に来ている。
「そ、それ以上は近づくなよ」
「分かった分かった。早く行って来い」
「絶対に近づくなよ!」
 陸は再度念を押してから衣服を脱ぎ、水の中へと入っていく。
 その水場は薄暗い洞窟の中にあるのだが、浅い川のようになっていて、水は澄んでいて綺麗だ。水の流れもそれほど速くはなく、ゆっくりと水浴びをすることが出来る。
 この世界の気温はそれほど低くはなく、その上に川の水は少し温い状態だったので、川で体を洗うと気持ちが良かった。
(そういや……あちこちで湯気が吹き出てる場所があったから、水も温められてるのかな……?)
 髪と体を洗って岸に戻ると、律儀にアハシマが少し離れたところで待っている。陸は用意されていた布で急いで体と髪を拭き、薄い布で作られた衣服に袖を通す。
 高天原の衣装は何枚もの着物を重ね着していたが、こちらの衣服は薄い布で作られた着物が上下それぞれ一枚ずつだ。こちらのほうが断然動きやすいし、気温の高いこの国の気候には合っているのだろう。
 陸はきょろきょろと辺りを見回す。こうして部屋の外へ出ることが出来るチャンスは少ないから、どこか逃げ出せる場所がないか確かめておきたかった。
「この付近には外に出れる道はないぞ」
 背後から声をかけられ、陸は慌てて振り返る。
「えっ? あ、いや、その……」
「終わったんだったら戻るぞ。あまり遅くなるとヒルコがうるさい」
「はいはい……っていうか、妹のほうがエラそうだよな。あんた兄ちゃんなんだろ? もっと妹に強く出たっていいんじゃないの?」
 陸は以前から感じていた疑問をアハシマにぶつけてみる。兄妹というわりに、どうもその雰囲気が奇妙で仕方がない。
「ヒルコは俺を解放してくれたからな。その恩は感じている」
「いや、だから兄妹なんだったら、助け合うのなんて当然じゃん。それを改まって恩を感じるとか言うのが理解できない」
「兄妹といっても、別々の体をしている以上は他人だろう。それとも、お前はそんなに俺たちの関係が気になるのか?」
「気になるっていうか……変だなと思ってさ……」
 最初は警戒心もあってほとんど口を利かなかったが、話せる相手がアハシマしかいないので、陸はずいぶんフレンドリーにアハシマと話をするようになっていた。
 あれ以来、変なこともされないし、あの奇妙な香も使用されていない。陸は自由に出かけられないことを除けば、それほど虐げられた生活はしていなかった。
 かといって、アハシマに気を許したわけではないし、ずっとこのまま囚われの身でいるつもりはない。
 何とかしてアハシマからここを抜け出すための情報を引き出すことが出来ないかということを、陸は常に考え続けていた。
 しかし、アハシマは陸の会話や質問には応じるが、肝心な部分に関してはまったく情報を話そうとはしなかった。アハシマも陸に寛容な様子を見せながら、肝心な部分ではまったく箍を緩める気配はなさそうだった。

「遅かったのね」
 部屋に戻ると、ヒルコが待っていた。とたんに陸は嫌な気分になる。
 ヒルコに会うと、また何かをされるのではないかという恐怖心がこみ上げてくるのだ。
 ヒルコはその笑顔の下で何を考えているか分からないようなところがある。かといって、アハシマの考えていることが分かるというわけでもないのだが……。
「今日はいいものを見せてあげる」
「別に見たくない。どうせろくでもないもんなんだろ」
「ふふ、さあどうかしら? あんたの大好きなアマツ兄さまよ。本当に見たくないの?」
「アマツ……? お前らアマツに何かしたのか!?」
「してないわよ。アマツ兄さまは元気よ。あんたもアマツ兄さまの元気な姿を見たいでしょ?」
「っていうか、お前、何を企んでるんだ?」
 とてもヒルコの言葉を額面通りに受け取ることは出来そうにない。
「いいから、見なさい。ここに今から映すから」
 ヒルコが指差したのは、大きな水瓶だった。陸がそれを覗いてみると、水面には覗いている自分の顔が映ってる。その水瓶に、ヒルコは小さな瓶のようなものから水滴を落とす。その水滴が波紋を描いていった。
「あ……」
 水瓶を覗いている陸の顔が歪み、別の風景が浮かび上がってきた。
「アマツ……」
 確かに、そこに映っていたのはアマツの姿だった。誰かを抱き上げ、どこかに運んでいるようだった。
「あれは……トミビコ……?」
 トミビコがギュッとアマツにしがみつき、アマツはそれをまるで宝物みたいに大切そうに運んでいる。
(だ、大丈夫だ……これぐらい……。アマツだってトミビコのことは弟みたいなものだって言ってたし……)
 陸がそう思っていると、再び水面がゆらぎ、また別の風景を映し出す。
「あ……」
 今度は二人が仲睦まじく会話をしている様子だった。アマツもトミビコも笑顔だ。
(俺がいなくなって……心配……とかしてないのかな……?)
 次第に陸はもどかしい気持ちになる。しかし、その気持ちを振り払うかのように、陸は首を横に振った。
(べ、別に……俺のことを心配ばかりして憔悴してて欲しいなんて思ってないし……。笑うことも出来てるんなら良かったじゃん……)
 また水面が揺らいで、別の風景を映し始める。
「……っ……!?」
 今度は二人がキスをしている映像だった。
(ちょ……っ!? こ、これどういうことだよ!? トミビコは弟のようなものじゃなかったのか? 弟とキスしたりなんかするのか!?)
 二人のキスの映像はそう長くは続かなかったが、その時間は陸にとっては永遠のように長く感じた。
 気がつけば悲しいのか怒っているのかよく分からないような自分の顔が水面に映っている。
「ふふ……。アマツ兄さま、元気だったでしょう?」
「う、うるさいっ」
「あんたがこうして囚われている間にも、アマツ兄さまは楽しんでいるみたいだったわねえ?」
「うるさいっ、黙れっ!」
「もうアマツ兄さまは、あんたのことなんてどうでもいいのよ」
「黙れっ!! 出て行けっ!!」
 陸はその場にあったものを掴んでヒルコに向かって投げつける。驚くほどにそれは命中せず、部屋の壁に当たって落ちた。
「ふう、危ない危ない。じゃ、私は今日は退散するわ。あ、そうそう、アハシマ兄さまにこれあげる。この間の香はあまりお気に召してもらえなかったみたいだから。ふふ、今度は気に入ってもらえると嬉しいわ」
 アハシマに何かを手渡すと、ヒルコは部屋を出ていった。



昨日は更新できず、すみませんでしたm( __ __ )m
ちょっとバタバタと慌ただしい状態で、毎日の更新ができない日があるかもしれませんが……。
懲りずに読みに来ていただけると嬉しいです(=・ω・)ノ

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EDIT [2012/10/30 07:42] 高天原で恋に落ちた Comment:0
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