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季節は巡り、街にジングルベルが鳴り響く時期がやって来た。
とはいっても、まだ12月の初めだ。
けれども、街は11月の終わりにはもう、クリスマスの色に色づき始める。
「何おごってもらおうかな~」
「せっかくだから飲みに行こうぜ!20歳になったんだし」
大学の講義が終わってから、淳平と街に繰り出した。
今日は悠樹の20回目の誕生日だったからだ。
家でもきっと何か準備をしてくれようとしていたはずだが、先に淳平と約束をしていたので、夜は外で食べると伝えておいた。
大学では一年先輩になってしまった淳平だが、誕生日も4月なので、成人するのも淳平のほうが先だった。
淳平は合コンなどにも誘われれば行くようになり、酒の飲み方をそれなりに覚えたようだった。
ただ、淳平がたまに二日酔いで青い顔をしているのを見ると、悠樹はアルコールに対してあまり良い印象はもてなかった。
「うーん……お酒かぁ……」
「やっぱ20歳になったら記念に飲むだろ!」
「普通のご飯でいいや」
「ええええ?まあ……そんなに強くないカクテル一杯ぐらいは飲めよ!」
「うーん……じゃあ、飲めなかったら残していい?」
「いい!」
そんなわけで、今夜の食事は淳平がおすすめだという居酒屋に行くことになった。
とても大企業の御曹司が行くような店には見えない大衆的な居酒屋は、悠樹にとっても珍しくて面白かった。
何を注文していいのか解らなかったので、オーダーはすべて淳平がやってくれた。
飲み物は淳平は生ビールを注文し、悠樹にはマンゴーサワーというのを注文してくれた。甘くて飲みやすいらしい。
「じゃあ、誕生日おめでとう!」
「ありがとう!」
グラスをあわせて乾杯する。
去年の今頃はニューヨークにいたけれど、残念なことにクリスマス前後はまだ精神的にも不安定な時期で、あまり良い思い出はなかった。
あの時は、とてもこんなふうに普通の生活に戻れるなんて思わなかったけど。
いろんな人のおかげで、ほとんどもとの生活を取り戻すことが出来た。
誕生日という境目は、ついそんなことを考えてしまったりする。
「どう?マンゴーサワー」
「うーん……甘い?」
「飲めそう?」
「うん……これなら飲めそうかも……でも、お酒ってこんなものなの?」
「こんなものって?」
「もっとすごいの……想像してたから……」
「どんなのを想像してたんだよ!?」
「だって……淳平がよく二日酔いだって言ってるから……」
「ああ……あれは飲みすぎたらああなるの。適量なら酒は薬にもなるんだぞ!?」
そう力説する淳平の実家は、超有名な酒造メーカーだった。
淳平が頼んだビールも、悠樹のためにオーダーしたカクテルも、すべてそこの商品らしい。
「飲めるのは解って良かったけど、今日はそれ一杯で終わりな?自分の適量が解るまでは、一杯ぐらいで終わらせておいたほうがいいよ」
まるで自分の経験を思い出したように、淳平は言った。
「じゃあ、そうしておく」
悠樹は笑って、また少しお酒を飲んだ。
確かにほわほわとして、いい気分になってくる。
料理もたくさん食べた。
見た目もジャンクで、味もジャンクだったが、それがかえって新鮮で美味しく感じられた。
「そういえばさ……彼女出来たの?」
何となくいい気分になって、普段は遠慮して聞けないようなことを聞いてみた。
たまに淳平が合コンに行っているという話を聞いている割に、彼女が出来たという話を聞かないのだ。
「うーん……いいなって思うような子はいるにはいるんだけど……けっこう彼氏がいたりしてさ」
「そうなんだ……」
「人数合わせで彼氏がいるのにコンパにきてるような子に、いつも惹かれちゃうんだよな」
「それは……切ないね」
「だろ?」
同意を求めるように言って、淳平はビールを飲んだ。
何だか二人でお酒を飲んでいるのが、すごく不思議な気がした。
淳平の忠告どおりカクテル一杯だけにしておいたおかげで、店を出るときも何だかふわふわしたいい気分のままだった。
「じゃ、気をつけて帰れよ!」
「うん、今日はありがとう」
「また大学でな!」
駅の方向が違う淳平とは道の途中で別れた。



まだ時間も早くて、悠樹は何となく街を少し歩いてみたい気分になった。
ネオンに彩られた夜の街は、マンハッタンの街並みに少し似ていて、何となく懐かしい気分になる。
去年ももっと状態が良ければ、クリスマス色に彩られた幻想的なマンハッタンを見ていたはずだけど。
それを見れなかったのは、少し残念だった。
12月という街の雰囲気が、恋人たちをロマンチックな気分にさせているのだろう。
行き交うカップルは皆、体を寄せ合い、幸せそうな表情を浮かべていた。
悠樹はちょっとうつむいた。
何となく寂しくなってしまって、街を歩かずにさっさと帰れば良かったと思い始めた。
あの別れの日以来、漣とはまったく会っていないし、連絡も取っていない。
そんな悠樹と漣をよそに、業務提携のほうは順調に進んでいるようだった。
以前から力を入れたかった情報システム分野に力強い味方を得て、父は大喜びだった。
漣は今でも、父の相談に乗ってくれたりもしているらしい。
父の口を通してとはいえ、漣の名前を聞くのは辛かったけれど。
それでもやはり、名前を聞くたびに、胸がざわめいた。
この胸のざわめきが、いったいどういう感情なのか……悠樹は未だに自己分析が出来なかった。
無理に分析しようという気にならないということも、あったのかもしれない。
「寒い……」
夜風が少し強くなってきて、お酒で火照っていたはずの体も急速にさめつつあった。
そろそろ帰ろうと思い駅に向かおうとした悠樹は、はたと足を止めた。
あるはずのない人物がそこを歩いていた。
「漣……兄さん……」
気づかれぬうちに立ち去ろうと思いつつも、その姿を凝視してしまう。
シックなコートの下に高級そうなスーツを着こなしたその姿は、人目……特に女性たちの目を惹いていた。
ひょっとして……もう誰か恋人でも出来たのだろうか。そんな気がしたのは、漣が以前にも増して、男らしく、頼りがいのある男性に見えたからだった。
悠樹と別れてからもう8ヶ月以上が経つ。
漣ほどの男なら、とっくに新しい恋人が出来てもおかしくはないはずだった。
いったいどんな恋人だろう……。
悠樹はもうすっかり、漣には新しい恋人が出来たのだという思いに囚われていた。
漣を追いかけるようにして建物から出てきたのは、テツヤだった。
珍しくカジュアルなものではなく、きちんとしたタイプのスーツを着込んでいる。
二人は立ち止まって何かを話している。今のうちに背を向けよう……そう思うのに、悠樹はそこを立ち去ることが出来ない。
最初に悠樹に気づいたのはテツヤのほうだった。
「ユウキ……」
その声に、漣の視線も悠樹のほうに向けられた。
漣と目が合ってしまった。
けれども、どうしていいか解らずに、悠樹は立ち尽くした。
やがて、先に目を逸らしたのは漣のほうだった。
漣はゆっくりと悠樹から視線をそらすと、そのまま何も見なかったみたいに待っていた車に乗り込んだ。
テツヤはちょっと戸惑ったみたいに、まだ悠樹のことを見ていた。
悠樹はいたたまれない気持ちになって、気がつけば駆け出していた。
漣のとった行動は当然のものだった。
漣は何も悪いことなどしていない。
別れは自分から切り出したのだ。解放して欲しいと訴えた。
だからもう、戸籍の上で従兄弟でもない漣は、赤の他人なのだ。
道で会ったからといって、わざわざ声をかけたりすることもない。そうするのが当然だろう。
「……ッ……!」
いったい自分は何を求めていたのだろう……。
自分が一瞬感じた期待も、その後に感じた失望も。
すべてを忘れてしまいたくて、悠樹はとにかく走り続けた。



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EDIT [2011/08/05 07:02] Breath <2> Comment:2
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2011/08/05 20:32] EDIT
>シークレットAさん

いつもコメントありがとうございます!

悠樹が別れを切り出した理由については、今回の更新で触れさせていただきましが、
要するにAさんがおっしゃるように、他のことを考えるのが難しい状態だったのですね。

ともかく時間の経過が必要な感じだったので、間の時間を端折りまくってしまいましたが(笑)

この先の関係については……どうなるのでしょう(謎)
書けないことが多いです(笑)

漣との再会は誕生日プレゼント……なのかな(笑)

もし私だったら、解放して……なんていわれたら、もういいやってなって他の人を探してしまいそうです(笑)
漣はどうだか解りませんが!

次回更新もまた読みに来ていただけると嬉しいです!
[2011/08/06 07:59] EDIT
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